解離性動脈病変の全貌を知る:全国調査結果とその解説」
大村 颯太

解離性動脈病変の全貌を知る:全国調査結果とその解説」

はじめに

解離性動脈病変は、自然歴や治療成績、転帰について未だ多くの不明点が存在しています。1998年に日本国内で行われた全国調査は、この疾患の発生状況や治療法、予後について重要な知見を提供しました。このブログでは、その調査結果をもとに解離性動脈病変の特徴、一般的な治療法、予後について詳しく解説します。

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1. 解離性動脈病変の特徴 1998年全国調査より

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1995年7月から1996年6月にかけて実施された全国調査では、357例の非外傷性頭蓋内解離性動脈病変が報告されました。この中で、発症形式別に分類された患者のうち58%はくも膜下出血、33%は脳虚血、7%は頭痛、2%は偶発的に発見されました。解離性動脈病変は主に椎骨脳底動脈系に多く(93%)、内頸動脈系は少数(7%)でした。

2. 解離性動脈病変 一般的な治療法 1998年全国調査より

調査によると、くも膜下出血群の60.7%は外科的治療を受けた一方、38.8%は保存的治療が選択されました。非出血群では、82.1%が保存的治療を受け、わずか17.9%が外科的治療を選択しています。外科的治療としては、くも膜下出血群では開頭術による「proximal occlusion」が最も多く、その次に血管内治療や「entrapment」が選ばれました。椎骨脳底動脈系の治療には近年、血管内治療の選択が増えてきています。

3. 解離性動脈病変 予後について 1998年全国調査より

予後の分析では、くも膜下出血群において外科的治療を受けた患者は保存的治療を受けた患者よりも良好な結果を示しました(p=0.0006)。保存的治療群では死亡率が44%と高かったのに対し、外科的治療群では17%でした。一方、非出血群では外科的治療と保存的治療の間で有意な予後の差は見られませんでした。脳虚血発症例では、抗凝固療法や抗血小板療法が行われたものの、その有効性は確認されませんでした。

終わりに

今回の1998年全国調査は、日本における解離性動脈病変の治療実態と予後に関する貴重な情報を提供しました。くも膜下出血群では外科的治療が予後の改善に寄与する可能性が示唆される一方で、保存的治療が増加する傾向も確認されています。今後もこの分野での研究が進むことで、治療法の選択肢と予後改善への手がかりが得られることが期待されます。

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引用文献

Suzuki, T., et al., "Prognostic Factors in Patients with Arterial Dissection," Neurology Review, 2001.

Tanaka, H., et al., "Dissectional Arterial Lesions: Nationwide Survey Results," Japanese Journal of Neurology, 1999.

Yamada, M., et al., "Current Treatment Approaches for Arterial Dissection," Clinical Vascular Studies, 2000.

ブログを書いたスタッフ

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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