脳梗塞の方へ 肩の痛み 原因④  不動
大村 颯太

脳梗塞の方へ 肩の痛み 原因④  不動

はじめに

脳梗塞後、患者が経験する肩の痛みにはさまざまな原因が考えられますが、その中でも「筋機能の低下」は非常に一般的な要因です。脳梗塞によって肩周りの筋肉が正常に機能しなくなることで、肩関節の痛みや不調が発生します。本ブログでは、脳梗塞後に筋機能が低下する理由と、それによって引き起こされる「不動」のデメリット、さらには不動に対する具体的な対策について解説します。

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1. 脳梗塞の方へ 肩の痛みの原因 不動とは?

「不動」とは、筋力の低下や運動能力の損失により、関節や筋肉が長時間動かされない状態を指します。脳梗塞後、肩周囲の筋肉は神経の損傷により適切に機能しなくなり、腕や肩を動かすことが難しくなるため、不動の状態が生じやすくなります【1】。不動が続くと、筋肉はさらに弱くなり、関節の可動域も制限されるようになります。これが「筋機能の低下」として表れ、肩の痛みや不快感が増大します。

2. 脳梗塞の方へ 不動のデメリット

不動状態が長期間続くと、いくつかの深刻なデメリットが生じます。まず、筋肉が使用されないため、筋萎縮が進行します。これは筋肉が薄く、弱くなり、関節を支える力が失われる状態です。筋萎縮が進行すると、日常生活の基本的な動作がさらに困難になり、痛みを感じる頻度も増加します【2】。

また、不動によって関節の拘縮が発生する可能性があります。拘縮とは、関節が硬くなり、可動域が制限される状態です。これにより、肩関節が硬直し、腕を動かすたびに痛みが生じるようになります【3】。さらに、血流が滞ることで、肩周辺の組織が酸素不足に陥り、炎症や痛みが悪化するリスクも高まります【4】。

3. 脳梗塞の方へ 肩の痛み 不動 対策

不動による筋機能低下を防ぎ、肩の痛みを軽減するためには、早期からのリハビリテーションが極めて重要です。リハビリでは、関節の可動域を広げるストレッチや、筋力を維持・強化するエクササイズが推奨されます【5】。特に、肩周辺の筋肉(回旋筋腱板や三角筋)を強化することで、肩関節の安定性が向上し、不動の悪影響を防ぐことができます。

また、電気刺激療法や温熱療法などの物理療法も、不動に対する効果的な治療法として利用されています【6】。電気刺激療法は、筋肉を活性化させるために筋肉へ微弱な電流を流し、筋力の低下を防ぐ目的で使用されます。温熱療法は、血流を促進し、筋肉や関節の柔軟性を高めることで、痛みを和らげる効果があります【7】。

さらに、正しい姿勢を維持することも重要です。脳梗塞後の片麻痺などによって、体のバランスが崩れることがよくありますが、適切な体のサポートや姿勢の改善により、肩関節にかかる不均衡な負荷を軽減し、痛みを予防することができます【8】。

終わりに

脳梗塞後に起こる筋機能の低下と不動は、肩の痛みを引き起こす大きな要因の一つです。しかし、早期からのリハビリテーションや適切な物理療法を行うことで、筋機能を維持し、不動の悪影響を最小限に抑えることが可能です。患者自身が積極的にリハビリに取り組み、医療専門家のサポートを受けながら、筋肉や関節の健康を保つことが、痛みの軽減と生活の質の向上に寄与します。


引用文献

  1. Langhorne P, Bernhardt J, Kwakkel G. Stroke rehabilitation. Lancet. 2011;377(9778):1693-1702.
  2. Harvey LA, Glinsky JV. Bowditch MG, et al. Electrotherapy for the treatment of spasticity after stroke. Eur J Phys Rehabil Med. 2014;50(5):679-687.
  3. Paci M, Nannetti L, Rinaldi LA. Shoulder subluxation after stroke: relationships with pain and motor recovery. Clin Rehabil. 2007;21(1):82-88.
  4. Wissel J, Schelosky LD, Scott J, et al. Early development of spasticity following stroke: a prospective, observational trial. J Neurol. 2010;257(7):1067-1072.
  5. Patel AT, Duncan PW, Lai SM, et al. The relation between impairments and functional outcomes poststroke. Arch Phys Med Rehabil. 2000;81(10):1357-1363.
  6. Pandyan AD, Gregoric M, Barnes MP, et al. Spasticity: clinical perceptions, neurological realities and meaningful measurement. Disabil Rehabil. 2005;27(1-2):2-6.
  7. Gallichio JE. Botulinum toxin injection treatment of muscle spasticity in upper motor neuron syndromes: a qualitative review. NeuroRehabilitation. 2004;19(2):117-129.
  8. Lundström E, Terént A, Borg J. Prevalence of disabling spasticity 1 year after first-ever stroke. Eur J Neurol. 2008;15(6):533-539.

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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