脳梗塞の方へ 肩の痛み 原因①  亜脱臼
大村 颯太

脳梗塞の方へ 肩の痛み 原因①  亜脱臼

はじめに

脳梗塞を経験された方は、身体にさまざまな障害を抱えることがあります。その中でも「肩関節の亜脱臼」は、多くの患者に見られる症状であり、肩の痛みや運動機能の低下につながることが知られています。亜脱臼はリハビリテーションの過程で頻繁に問題となるため、適切な理解と対策が必要です。本ブログでは、脳梗塞後に起こる肩関節の亜脱臼について、その定義、原因、対策を詳しく解説します。

1. 脳梗塞の方へ 肩関節の亜脱臼とは

肩関節の亜脱臼とは、肩甲骨と上腕骨が部分的にずれる状態を指します。完全な脱臼とは異なり、関節が部分的に接触したままですが、正常な位置関係が崩れるために痛みや運動制限が生じます。特に脳梗塞後の片麻痺を持つ患者に多く見られる症状であり、腕を動かす際の不快感や痛みが典型的な症状です【1】。肩関節は人体で最も可動範囲が広い関節であるため、その構造上、亜脱臼が発生しやすい部位でもあります。

2. 脳梗塞の方へ 亜脱臼が起こる原因

脳梗塞後に肩関節の亜脱臼が発生する主な原因は、筋肉の弱化と神経機能の損傷です。脳梗塞によって片側の筋肉が麻痺すると、肩関節を支える筋肉(特に三角筋や回旋筋腱板)が十分に機能しなくなります。この筋力低下により、肩甲骨が上腕骨を正しい位置に保持できず、肩関節が徐々に下にずれてしまいます【2】。

また、脳梗塞による神経障害も、亜脱臼の原因となります。脳の損傷により、筋肉を適切に制御する神経信号が遮断されると、筋肉の不均衡が生じ、肩関節の安定性が失われます。さらに、リハビリテーション中に誤った体位や運動が繰り返されると、関節に余計な負荷がかかり、亜脱臼のリスクが高まります【3】。

3. 脳梗塞の方へ 亜脱臼の対策について

亜脱臼を防ぐためには、適切なリハビリテーションと肩関節を保護するための対策が重要です。まず、肩関節を支える筋力を徐々に回復させるための運動療法が推奨されます。特に、三角筋や回旋筋腱板を強化するエクササイズは、肩の安定性を保つために有効です【4】。

また、リハビリ中に肩関節に過度な負荷がかからないようにするためのサポートツールの使用も重要です。例えば、肩を支えるためのスリングや、関節を正しい位置に保持するための特殊な装具を使用することで、亜脱臼の進行を防ぐことができます【5】。

さらに、早期にリハビリを開始し、正しい姿勢や動作を習得することも効果的です。患者が自分自身で適切な動作を行えるようになることで、肩にかかる不均衡な負荷を軽減し、亜脱臼の発生を防ぐことが期待されます【6】。

終わりに

脳梗塞後に発生する肩関節の亜脱臼は、痛みや運動障害を引き起こし、リハビリの進行を妨げる要因となります。しかし、早期に適切な対策を講じることで、亜脱臼の発生や悪化を予防し、肩の機能回復を促進することが可能です。患者自身の理解と、医療専門家の適切な指導を受けながら、継続的なリハビリに取り組むことが大切です。


引用文献

  1. Boyd EA, Ada L. Subluxation after stroke: A comparison of four approaches to treatment. Clin Rehabil. 2001;15(4):388-394.
  2. Paci M, Nannetti L, Rinaldi LA. Shoulder subluxation after stroke: relationships with pain and motor recovery. Clin Rehabil. 2007;21(1):82-88.
  3. Gamble GE, Barberan E, Laasch HU, et al. Post-stroke shoulder pain: A prospective population-based study. Stroke. 2002;33(12):2979-2984.
  4. Turner-Stokes L, Jackson D. Shoulder pain after stroke: A review of the evidence base to inform the development of an integrated care pathway. Clin Rehabil. 2002;16(3):276-298.
  5. Wissel J, Schelosky LD, Scott J, et al. Early development of spasticity following stroke: a prospective, observational trial. J Neurol. 2010;257(7):1067-1072.
  6. Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, et al. Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study. Stroke. 2007;38(2):343-348.

ブログを書いたスタッフ

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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