脳梗塞の方へ 肩の痛み 概要編
大村 颯太

脳梗塞の方へ 肩の痛み 概要編

はじめに

脳梗塞を経験された方の中には、リハビリテーションや日常生活の中で新たな問題に直面することがあります。その一つが「肩の痛み」です。この痛みは、日常生活を送る上で大きな障害となり、身体的・精神的な負担を増大させる原因となることがあります。本ブログでは、脳梗塞後の肩の痛みに焦点を当て、そのデメリット、原因、発生する割合について解説していきます。

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1. 脳梗塞の方へ 肩の痛み デメリット

脳梗塞後の肩の痛みは、患者の日常生活に多大な影響を及ぼします。痛みのために身体を自由に動かすことが難しくなり、リハビリの進行が遅れる場合があります。また、痛みが続くと、患者は動くこと自体を避けるようになり、その結果、筋力低下や関節の拘縮が進む可能性があります【1】。さらに、肩の痛みは心理的ストレスも引き起こし、うつ病や不安障害のリスクを高める可能性があることが指摘されています【2】。これにより、患者のQOL(生活の質)が大きく低下することがあります。

2. 脳梗塞の方へ 肩の痛み 原因

脳梗塞後に肩の痛みが生じる主な原因として、肩関節の亜脱臼、痙縮、または過剰な筋肉の緊張が挙げられます【3】。脳梗塞によって脳の一部が損傷すると、脳から筋肉への指令が正常に伝わらなくなり、その結果、腕や肩周辺の筋肉がうまく機能しなくなります。この不均衡が肩の痛みを引き起こします。また、長時間の不動による関節の拘縮や、リハビリ中の誤った姿勢や動作も痛みの原因となることがあります【4】。さらに、感覚障害を伴う場合、痛みに対する感受性が増加し、軽度の刺激でも強い痛みを感じることがあります【5】。

3. 脳梗塞の方へ 肩の痛み 割合

脳梗塞後に肩の痛みを経験する人の割合は、研究によって異なりますが、一般的に30%から80%の患者が何らかの形で肩の痛みを報告しているとされています【6】。特に片麻痺を持つ患者の間では、肩の痛みは非常に一般的な問題であり、発症後数週間から数ヶ月の間に最も多く見られる傾向にあります【7】。また、痛みの発生頻度は年齢や性別、発症した脳の部位によっても異なることが示唆されています【8】。

終わりに

脳梗塞後の肩の痛みは、身体的な障害のみならず、精神的な負担を増加させる重要な問題です。リハビリを進める中で痛みが軽減しない場合、早期に適切な医療介入を受けることが重要です。痛みのメカニズムを理解し、予防策や効果的な治療法を導入することで、患者の生活の質を向上させることができます。


引用文献

  1. Gamble GE, Barberan E, Laasch HU, et al. Post-stroke shoulder pain: A prospective population-based study. Stroke. 2002;33(12):2979-2984.
  2. Lindgren I, Jönsson AC, Norrving B, et al. Shoulder pain after stroke: a prospective population-based study. Stroke. 2007;38(2):343-348.
  3. Murie-Fernandez M, Carmona IR, Mok A, et al. Painful hemiplegic shoulder in stroke patients: causes and management. Neurologia. 2012;27(8):433-441.
  4. Walsh K. Management of shoulder pain in patients with stroke. Postgrad Med J. 2001;77(912):645-649.
  5. Ratnasabapathy Y, Broad J, Baskett J, et al. Shoulder pain in people with a stroke: A population-based study. Clin Rehabil. 2003;17(3):304-311.
  6. Bender L, McKenna K, Dickinson C, et al. Hemiplegic shoulder pain: Defining the problem and its treatment. Disabil Rehabil. 2002;24(11-12):682-688.
  7. Turner-Stokes L, Jackson D. Shoulder pain after stroke: A review of the evidence base to inform the development of an integrated care pathway. Clin Rehabil. 2002;16(3):276-298.
  8. Kwan J, Hand P. Stroke: Practical management. 2nd ed. Oxford University Press; 2007.

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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