はじめに
脳梗塞は、身体の様々な機能に影響を与え、特に運動機能が低下することが多いです。肩の筋力が低下すると、日常生活の動作に支障が出るため、肩の筋活動を改善するためのリハビリテーションが重要です。本記事では、脳梗塞後の方が自宅で行えるセルフケアを「Step1」から「Step6」に分けて紹介します。これらのステップは、リハビリの進行に応じて徐々に進めることをお勧めします。
1. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step1: 感覚刺激
最初のステップは、肩の感覚を再び認識するための感覚刺激です。脳梗塞の影響で感覚が鈍くなったり、失われたりすることがあるため、皮膚や筋肉に対して外部からの刺激を与えることで、神経系の活性化を図ります。タッピングや摩るように皮膚感覚を刺激します。これにより、脳と肩の感覚の再接続を促進します【1】。
2. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step2: 運動イメージ
運動イメージは、実際に体を動かすことなく、脳内で肩の動きをイメージする方法です。この方法は、脳の運動領域を活性化させ、運動の再学習を促します。毎日数分間、肩をゆっくりと上げ下げする様子を頭の中で繰り返しイメージし、その動きに集中します。研究では、運動イメージが運動回復に効果的であることが報告されています【2】。
3. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step3: 他動運動
次に、他動運動を行います。他動運動は、自分の力ではなく、他者や補助具を使って肩を動かす方法です。この段階では、肩の関節可動域を広げることを目指し、肩周囲の筋肉の緊張を和らげる効果も期待されます。ご自身で動かすのが難しい場合は、介助者の手を借りて、肩の前後や回転運動を行ってください【3】。
4. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step4: 自動介助運動
Step4では、自動介助運動を取り入れます。片手を使ってもう片方の肩を動かすことで、自らの力で動きをコントロールしながら、適切な補助を加えます。例えば、健常な手で患側の腕を支えながら、ゆっくりと肩を上げ下げしたり、回したりする動作を行います。これにより、肩の筋活動が少しずつ改善されていきます【4】。
5. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step5: OKC運動
OKC(Open Kinetic Chain)運動とは、体の末端(手や足)が自由に動く状態で行う運動です。具体的には、肩の上げ下げや前後運動など、軽い抵抗を加えながら行う運動を指します。肩の動作が自力である程度可能になってきた段階で、タオルを使って引っ張る、ゴムチューブを利用した運動を取り入れ、筋力をさらに向上させます【5】。
6. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step6: CKC運動
最後に、CKC(Closed Kinetic Chain)運動です。CKC運動では、体の末端が固定され、他の関節や筋肉も協調して動く運動です。例えば、壁に手をついて肩を支えながら、軽く押しながらの動作を行います。これにより、肩だけでなく、全身の協調動作が求められるため、筋力とバランスを同時に鍛えることができます【6】。
終わりに
脳梗塞後の肩のリハビリには、段階的に進めることが大切です。感覚刺激から始め、運動イメージや他動運動、自動介助運動を経て、最終的にはOKCおよびCKC運動に取り組むことで、肩の筋活動を効果的に改善することができます。セルフケアの中でも無理をせず、痛みや疲労を感じた際には、必ず専門家の指導を仰いでください。
【引用文献】
- Bolognini, N., et al. "Sensory stimulation and post-stroke motor recovery." NeuroRehabilitation and Neural Repair, 2016.
- Zimmermann-Schlatter, A., et al. "Motor imagery training for stroke rehabilitation." Cochrane Database of Systematic Reviews, 2008.
- Kwakkel, G., et al. "Effects of robotic therapy for the upper limb after stroke." Stroke, 2008.
- Hatem, S. M., et al. "Rehabilitation of motor function after stroke: A review of current evidence." Stroke Research and Treatment, 2016.
- Langhorne, P., et al. "Early rehabilitation after stroke: an overview of evidence." Stroke, 2011.
- Broeks, J. G., et al. "The long-term outcome of arm function after stroke." Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 1999.
ブログを書いたスタッフ
大村 颯太
理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。
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