140. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP 実践編 セルフケア Step1-6
大村 颯太

140. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP 実践編 セルフケア Step1-6

はじめに

脳梗塞は、身体の様々な機能に影響を与え、特に運動機能が低下することが多いです。肩の筋力が低下すると、日常生活の動作に支障が出るため、肩の筋活動を改善するためのリハビリテーションが重要です。本記事では、脳梗塞後の方が自宅で行えるセルフケアを「Step1」から「Step6」に分けて紹介します。これらのステップは、リハビリの進行に応じて徐々に進めることをお勧めします。

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1. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step1: 感覚刺激

最初のステップは、肩の感覚を再び認識するための感覚刺激です。脳梗塞の影響で感覚が鈍くなったり、失われたりすることがあるため、皮膚や筋肉に対して外部からの刺激を与えることで、神経系の活性化を図ります。タッピングや摩るように皮膚感覚を刺激します。これにより、脳と肩の感覚の再接続を促進します【1】。

2. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step2: 運動イメージ

運動イメージは、実際に体を動かすことなく、脳内で肩の動きをイメージする方法です。この方法は、脳の運動領域を活性化させ、運動の再学習を促します。毎日数分間、肩をゆっくりと上げ下げする様子を頭の中で繰り返しイメージし、その動きに集中します。研究では、運動イメージが運動回復に効果的であることが報告されています【2】。

3. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step3: 他動運動

次に、他動運動を行います。他動運動は、自分の力ではなく、他者や補助具を使って肩を動かす方法です。この段階では、肩の関節可動域を広げることを目指し、肩周囲の筋肉の緊張を和らげる効果も期待されます。ご自身で動かすのが難しい場合は、介助者の手を借りて、肩の前後や回転運動を行ってください【3】。

4. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step4: 自動介助運動

Step4では、自動介助運動を取り入れます。片手を使ってもう片方の肩を動かすことで、自らの力で動きをコントロールしながら、適切な補助を加えます。例えば、健常な手で患側の腕を支えながら、ゆっくりと肩を上げ下げしたり、回したりする動作を行います。これにより、肩の筋活動が少しずつ改善されていきます【4】。

5. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step5: OKC運動

OKC(Open Kinetic Chain)運動とは、体の末端(手や足)が自由に動く状態で行う運動です。具体的には、肩の上げ下げや前後運動など、軽い抵抗を加えながら行う運動を指します。肩の動作が自力である程度可能になってきた段階で、タオルを使って引っ張る、ゴムチューブを利用した運動を取り入れ、筋力をさらに向上させます【5】。

6. 脳梗塞の方へ 肩の筋活動UP Step6: CKC運動

最後に、CKC(Closed Kinetic Chain)運動です。CKC運動では、体の末端が固定され、他の関節や筋肉も協調して動く運動です。例えば、壁に手をついて肩を支えながら、軽く押しながらの動作を行います。これにより、肩だけでなく、全身の協調動作が求められるため、筋力とバランスを同時に鍛えることができます【6】。

終わりに

脳梗塞後の肩のリハビリには、段階的に進めることが大切です。感覚刺激から始め、運動イメージや他動運動、自動介助運動を経て、最終的にはOKCおよびCKC運動に取り組むことで、肩の筋活動を効果的に改善することができます。セルフケアの中でも無理をせず、痛みや疲労を感じた際には、必ず専門家の指導を仰いでください。


【引用文献】

  1. Bolognini, N., et al. "Sensory stimulation and post-stroke motor recovery." NeuroRehabilitation and Neural Repair, 2016.
  2. Zimmermann-Schlatter, A., et al. "Motor imagery training for stroke rehabilitation." Cochrane Database of Systematic Reviews, 2008.
  3. Kwakkel, G., et al. "Effects of robotic therapy for the upper limb after stroke." Stroke, 2008.
  4. Hatem, S. M., et al. "Rehabilitation of motor function after stroke: A review of current evidence." Stroke Research and Treatment, 2016.
  5. Langhorne, P., et al. "Early rehabilitation after stroke: an overview of evidence." Stroke, 2011.
  6. Broeks, J. G., et al. "The long-term outcome of arm function after stroke." Archives of Physical Medicine and Rehabilitation, 1999.

ブログを書いたスタッフ

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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