脳梗塞の方へ 肩の可動域制限 原因3つ
大村 颯太

脳梗塞の方へ 肩の可動域制限 原因3つ

はじめに

脳梗塞を経験された方にとって、リハビリや日常生活の質を向上させるために、肩の可動域制限を理解し、適切に対処することは重要です。脳梗塞後に肩の動きが制限される原因はいくつかありますが、主に筋活動の低下、胸郭の柔軟性低下、運動時の痛みが大きな要因として挙げられます。本記事では、これらの要因について詳しく解説し、それぞれのメカニズムとその対処法について述べます。

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1.脳梗塞の方へ 肩の可動域制限① 筋活動の低下

脳梗塞後、最も顕著に現れる問題の一つが筋活動の低下です。脳のダメージにより、運動機能を司る神経の伝達が阻害され、筋肉の収縮や動きが十分に行えなくなります。これにより、肩周りの筋肉が萎縮し、可動域が大幅に制限されます。特に、三角筋や棘下筋といった肩関節を動かす筋群に影響が強く出ることがあります。

筋活動の低下が続くと、関節自体の硬化や筋力低下が進行し、さらに可動域が狭まってしまいます。このような場合、リハビリテーションや筋力トレーニングを通じて、少しずつ筋力を回復させることが大切です。

参考文献:

  • Nakayama H, Jørgensen HS, Raaschou HO, Olsen TS. "Recovery of upper extremity function in stroke patients: the Copenhagen Stroke Study." Arch Phys Med Rehabil. 1994.

2.脳梗塞の方へ 肩の可動域制限② 胸郭の柔軟性低下

肩の可動域は肩関節だけでなく、胸郭の柔軟性にも大きく依存しています。脳梗塞後、動作の低下により胸郭の動きが制限されやすくなります。胸郭は呼吸時や上肢の動きに伴い、微妙に伸縮や回旋を行っていますが、これが制限されると肩の動きも阻害されます。

胸郭の柔軟性が失われると、肩の動きは不自然なものになり、結果的に肩関節にも過剰な負担がかかりやすくなります。この状態が続くと、さらなる肩の可動域制限や痛みを引き起こす原因となります。呼吸法や胸郭を柔軟に保つためのストレッチを取り入れることで、胸郭の柔軟性を改善し、肩の可動域を広げることが期待されます。

参考文献:

  • Cifu DX, Stewart DG. "Factors affecting functional outcome after stroke: a critical review of rehabilitation interventions." Arch Phys Med Rehabil. 1999.

3.脳梗塞の方へ 肩の可動域制限③ 運動時の痛み

脳梗塞後のリハビリ中、肩に痛みを感じることが多く報告されています。この痛みは、肩関節の拘縮や腱板損傷、あるいは運動不足による組織の炎症からくるものです。特に、上腕二頭筋や肩関節を構成する筋・腱が影響を受けやすく、運動時に激しい痛みが生じることがあります。

痛みが強いと、患者は無意識に肩を動かさないようにするため、さらに可動域が狭まってしまいます。このような悪循環を断つためには、適切な痛みの管理と、無理のない範囲での運動を続けることが重要です。

参考文献:

  • Bender L, McKenna C, Fulk G. "Pain-related fear and shoulder pain in stroke: a prospective cohort study." Phys Ther. 2017.

終わりに

脳梗塞後の肩の可動域制限には、筋活動の低下、胸郭の柔軟性の低下、そして運動時の痛みという3つの主要な要因が関与しています。これらを理解し、適切なリハビリテーションや治療を行うことで、少しずつ改善が期待できます。継続的な運動と治療によって、肩の可動域を取り戻し、生活の質を向上させることが可能です。

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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