脳梗塞の方へ ミラーニューロンと共感
大村 颯太

脳梗塞の方へ ミラーニューロンと共感

はじめに

脳梗塞の患者さんが身体の回復とともに直面する課題の一つに「感情や共感の障害」があります。最近の研究では、脳の「ミラーニューロン」がこれらの感情や共感に深く関与していることが明らかになっています。今回は、脳梗塞のリハビリにおいて、ミラーニューロンが感情や共感にどのような影響を与えるのかを解説します。

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1. 脳梗塞の方へ ミラーニューロンと感情

ミラーニューロンは、他者の行動を見たり、感情を観察する際に、自分自身が同じ行動や感情を経験しているかのように反応する特殊な神経細胞です。この機能は、運動だけでなく、感情や意図の理解にも重要な役割を果たします。たとえば、他者が笑っているのを見たときに自分も楽しく感じる、または誰かが悲しんでいる様子を見ると共感して悲しみを覚えることは、ミラーニューロンが活性化することによって生じます​。

脳梗塞では、これらのミラーニューロンのネットワークが損傷を受けることにより、感情の認識や制御が難しくなる場合があります。このことが、患者さん自身の感情表現が乏しくなったり、他者の感情を理解しにくくなる原因となる可能性があります。

2. 脳梗塞の方へ ミラーニューロンと共感

ミラーニューロンは、特に共感の形成に重要な役割を果たします。共感とは、他者の感情や経験を理解し、共に感じる能力です。脳の前頭葉や側頭葉に位置するミラーニューロンが、他者の表情や声のトーンを認識し、それに応じた感情を引き起こします​。このプロセスが正常に働くことで、人は他者との情緒的なつながりを感じることができます。

脳梗塞後にこの共感能力が損なわれると、家族や介護者とのコミュニケーションに困難を生じることがあります。例えば、家族が患者さんに話しかけても感情的な反応が乏しい場合、家族は患者さんが関心を持っていない、または感情がないと誤解することがあります。しかし、これは患者さんが感情を感じていないのではなく、脳のミラーニューロンネットワークがうまく機能していない可能性があるのです。

3. 脳梗塞の方へ 共感の効果

脳梗塞患者さんのリハビリでは、共感を取り戻すことが重要です。共感は、患者さん自身の情緒的な健康を回復させ、社会的なつながりを維持するために役立ちます。共感能力が改善されると、患者さんは自分自身を他者と結びつけ、孤独感や不安感を軽減できる可能性があります。

研究によれば、リハビリの際に、患者さんが他者の感情や動作を観察し、それを理解しようとすることで、ミラーニューロンの活性化が促進されることが示されています。また、家族や介護者が患者さんと情緒的に接し、感情を共有することで、患者さんの共感能力を引き出す効果も期待されています。

終わりに

脳梗塞のリハビリにおいて、ミラーニューロンを意識したアプローチを取り入れることは、運動機能の回復だけでなく、情緒的な健康の向上にもつながります。特に、感情や共感の障害に対しては、家族や介護者が理解を深め、共感的な接し方を心がけることが大切です。共感を通じて、患者さんの心身の回復を支えていきましょう。

【引用文献】

  • Mirror Therapy in Stroke Rehabilitation: Current Perspectives. PubMed. 2020.

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大村 颯太

理学療法士/健康科学修士 京都 脳梗塞 脳出血 自費リハ 脳卒中後の自然に動ける身体づくりをサポートしています。

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